shin422のブログ

『哲学のヤンキー的段階』のための備忘録

2023-01-01から1年間の記事一覧

田辺元と個の偶然性-「哲学のヤンキー的段階」理解のための予備的考察④

田辺元という人は、哲学者にしては珍しく大変な秀才だったと言われる。確かに、著作を読む限り、同時代の哲学者だけでなく、現在に至る日本の哲学者の中でも、頭の出来はピカ一だったのではないだろうか。もっとも、頭の出来がいいからと言って、面白いもの…

曖昧さについて

ケインズ『確率論』において提示された確率の論理説の見解を批判し、いわゆる主観説を主張したフランク・ラムジー「真理と確率」は、確率を個人の「部分的信念の度合い」という解釈の下で分析することで確率概念を位置づけ、人間の精神作用における論理性を…

蒼生安寧、是を以て宝祚窮りなく、宝祚窮りなし是を以て国体尊厳なり。国体尊厳なり是を以て蛮夷・戎狄率服す

いわゆる「皇国史観」という言葉を聞くと、大東亜戦争での大敗という結果を招いた軍国主義体制を思想的・精神的に下支えしたイデオロギーであるとの条件反射を示す日本人は多いのではないだろうか。「皇国史観」という言葉が喚起するイメージは、まるで「悪…

「新帝国主義」という視点

マルクス主義者ではないどころか、経済理論に関しては、一見相互に矛盾するかに見える、ポスト・ケインズ主義とオーストリア学派を足して二で割ったような立場を採る者なので、当然にその主張の全てに必ずしも同意できるわけではないのだが、1980年代半ばか…

祝!阪神タイガース優勝

巨人倒しての優勝、実にいいねえ。 以上

ヘッジファンドへの誤解?

金融工学といっても、とてもじゃないが「科学」と呼べる域には達しておらず、その胡散臭さは身内からも指摘されて久しい。数学や物理学の研究者からすれば、「似非科学ではないか」との疑念を抱かれるだろうと想像される。確率論をその定量的側面だけではな…

You’ve got to hate to make money!

僕自身の専門分野に関わる内容について直に触れることは職業柄できれば避けたいことなのだが、あまりに面白く、しかも当該分野に携わっていない一般読者にとっても気軽に読める好著があるので、この場を借りて紹介したい。 我々が普段書店で目にする投資助言…

チュチェ思想再考

チュチェ思想として知られる政治哲学は、1972年に朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)公式の「唯一思想体系」としての国家的イデオロギーに確立された。日本語では「チュチェ」を「主体」と訳し、「チュチェ思想」を「主体思想」と訳されているが、この用語の…

悪さに魅せられる若者-荒井悠介『若者たちはなぜ悪さに魅せられたのか:渋谷センター街にたむろする若者たちのエスノグラフィー』を読む

荒井悠介『若者たちはなぜ悪さに魅せられたのか:渋谷センター街にたむろする若者たちのエスノグラフィー』(晃洋書房)は、一橋大学大学院社会学研究科に提出された博士論文が元になった社会学の研究書である。 十数年前に世に出た『ギャルとギャル男の文化人…

「新しい人」と「永遠の夢の時」-大江健三郎逝去

大江健三郎が88歳で老衰のため逝去という報を目にして、しばし茫然とするばかり。何とも言い難い虚脱感のような感覚に捕われ、仕事に身が入らない状況だ。 この報を目にしたのがつい先日であったので、おそらく、葬儀その他諸々の行事を親族だけで済ませて一…