shin422のブログ

『哲学のヤンキー的段階』のための備忘録

2021-11-01から1ヶ月間の記事一覧

ブルシット・ジョブ

将棋の棋士で、一時は弟弟子の大山康晴十五世名人と鎬を削りあった「升田・大山時代」を演じた升田幸三実力制四代名人は、「棋士という仕事は、別に世になくてはならない仕事というものではない」と言った。もちろん、この言葉は、棋士という職を貶めたい意…

「改革」とは、即ち「粛清」の別称なり

鴉の鳴かない日はあれど、「改革」の絶唱が鳴り止む日はない。そう思えてくるほど、世間では、とかく「改革」の言葉が好まれる。「改革」されさえすれば全ての問題が解決されるかのような幻想が振りまかれ、見せかけの「特効薬」の効用書に惑わされた大衆が…

fagging out

ギャングに属するゲイの男にとっての「男らしさ」とは、どのようなものなのか。ヴァネッサ・パンフィルのThe Gang's All Queer: The Lives of Gay Gang Members, NYU Press.はこう問いかけている。パンフィルは社会学と刑事政策の分野で学位を取得した女性研…

訴訟における証明論の基礎

東京大学教養学部理科Ⅰ類から法学部に進学したという「変わり種」である太田勝造が、東京大学大学院法学政治学研究科に提出した修士論文(指導教官は、高名な民事訴訟法学者の新堂幸司。なお、新堂学説の中で最も有名な部類に入るだろう争点効理論については…

法学の基礎

最近漸く手にした菅野和夫『労働法の基軸-学者五十年の思惟』(有斐閣)を読むと、現在の我が国で最高峰に位置する労働法者の、業績に裏打ちされた自負と併せて、言葉には出さないまでも「俺が日本の労働法学を背負って立つんだ」という静かな気概に支えられ…

ナショナリズム

大澤真幸『ナショナリズムの由来』(講談社)を読んだのは、まだ大学に入学してしばらく経ち、一人暮らしがしたくなったために、実家から大学まで十分通えたにもかかわらず、「渋谷で乗り換えるのが面倒だ」とか何とかゴネた挙げ句、どうにか引越しすることに…

「リベラル」と「ヤンキー」

ヤンキーは、「市民生活」のルーティンに堪えることへの侮蔑を背景に非日常的な「冒険」や「破天荒な行為」に興奮する傾向が強く、それゆえ行為の目的や意味よりも過程において惹起される波瀾それ自体に「祝祭」としての強い興味を覚えることに加え、公共的…

多世界解釈に対する素人からの疑問―ボルンの規則の導出について

量子力学の多世界解釈における確率の問題は、世界の分岐がボルンの規則と無関係であるために発生する。この理論では、測定結果の可能な組み合わせ系列は量子振幅のサイズに関係なく(それがゼロでない場合)量子状態のいくつかの分枝で実現される。これは、…

マルクスとハイデガーにおける個体化の問題について考えるために

人間は、歴史的に相互に複数の個々人として構成されている社会的存在である。「歴史」と「人間」は、マルクスにおいては密接不可分の概念である。よって、唯物論の歴史概念の時間論的解釈も、この歴史によって創造された「人間」に対する時間論的解釈の形を…

市民主義の哲学

昭和35(1960)年と言われて、すぐに思い浮かべるのは、日米安全保障条約の改定を実現しようとする岸信介内閣の打倒を掲げた一部の国民による激しい抗議運動である「60年安保闘争」であろう。「闘争」といっても、一部の都市において、一部の者が騒いでいた「…

キュービズムの哲学

野家啓一は、『物語の哲学』(岩波書店)において、独自の「物語論」と言語哲学に関する一定の立場に基づき、また大森荘蔵の見解への批判的再検討を加えながら、歴史記述の物語性について論じている(なお、野家の言う「物語論」でいう「物語」とはstoryとして…

廣松渉と毛沢東とプラグマティズム

平成8(1996)年から翌年にかけて、岩波書店から刊行された『廣松渉著作集』は、計16巻から成る。大部の著作集ゆえ、出版に要する経費は多額になる。そこで、本来なら廣松渉が東京大学退官後に着任する予定であった河合教育研究所から出版助成を受けることによ…

スルガ銀行の不正融資問題と不動産業界の浄化の必要性

数年前に発覚したスルガ銀行による収益不動産投資物件向け不正融資問題は、未だ解決したとは言えない状態が続いているようである。のみならず、新たな問題が浮上し、スルガ銀行に対する責任追及の声が被害者を中心に湧き起こっているという。一連の不正融資…