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『哲学のヤンキー的段階』のための備忘録

量子ファイナンスの道標

イスラム金融国際教育センター教授で、シンガポール国立大学の執行委員も務めるベラル・エサン・バーキーは、米国のカリフォルニア工科大学コーネル大学理論物理学を専攻し、主に場の量子論を研究した後、ファイナスや経済に興味を持ち、そこに量子力学の数学を応用できないか研究を続けている。一見しただけでは、「トンでも」の類ではないかとの疑念を抱く人がいても不思議ではないが、細木数子六星占術とどう区別してよいのかわからない精神分析のような似非科学というわけでもない。

 

量子ファイナンスに関する2冊の著書、『量子ファイナンス』(Quantum Finance)、『量子ファイナンスにおける利子率とクーポン債』(Interest Rates and Coupon Bonds in Quantum Finance)が Cambridge University Pressから既に出版され、この方面では著名な研究者である。以前、「オススメ4冊」の中で紹介した、3冊目の『経済学とファイナンス理論のための場の量子論』(Quantum Field Theory for Economics and Finance)も同じく Cambridge University Pressから出版された。場の量子論の数学的ツールを経済学やファイナンス理論に応用する方法を紹介するとともに、金融商品を設計するための幅広い数学的手法を提供している。

 

ラグランジアンハミルトニアン、状態空間、作用素ファインマン経路積分の考えは場の量子論の数学的基盤であることが既に実証され、経験的証拠によって検証されている。これを一見無関係な資産価格と利子率に関する包括的な数学的理論を定式化するために、ヘッジファンド業界の一部に採用されつつある。数値計算アルゴリズムとシミュレーションは、資産価格モデルと非線形的利子率の研究に適用され、オプション、クーポン債、ハイリスク債、ミクロ的行動関数など様々なトピックに量子力学的定式化が可能であることが示されている。

 

本書では、場の量子論を様々な経済・金融問題に応用している。ただ、高エネルギー物理学に関係づけられた計算とは全く異にしていることが興味をそそられる点の一つ。場の量子論は高エネルギー物理学への適用のために作られたのであって、オプション・プライシングのために作られたのではない。したがって、各ステップで場の量子論の数学的ツールの理解を修正し、適応させる必要がある。そこが、本書のキモの部分であろう。

 

そこで本書は、場の量子論と経済学やファイナンス理論の諸概念を結びつけることに注力するわけだが、事実、本書の約半分は、経済学とファイナンス理論のモデル研究に割かれ、これらの知識領域間の密接な数学的繋がりが示され、経済学やファイナンス理論への応用の多くを、実証的に検証できるモデルに基づかしめようと努力されている。注目すべき点は、これらのモデルが、ある程度正確であることを実証的検証がなされる準備が整いつつあることである。

 

場の量子論は、科学史上最も正確で重要な科学理論の一つであり、例えば、相対論的量子場は、粒子と相互作用についての標準モデルの理論的背景にある。相対論的・非相対論的量子場は、超弦理論、高エネルギー物理学、固体物理学から物性物理、量子光学、原子核物理、宇宙物理など、理論物理学の無数の分野で広く利用されている。

 

量子力学と場の量子論の形式から生まれた数学は、他の数学の分野とは若干異色で、量子力学の数学と呼ばれ、線形代数関数解析作用素代数、無限次元線形ベクトル空間、確率論、リー群、幾何学トポロジーなどのごたまぜといった様相である。量子力学と場の量子論の数学的基盤の一つに、ファインマン経路積分がある。一般的な関数積分とは異なり、ファインマン経路積分は、経路積分が基底の無限次元の線形ベクトル空間から構築されるという別の重要な特徴を持つ関数積分であり、演算子は、理論物理学の中心演算子であるハミルトニアンを含む、このベクトル空間で定義される。

 

ニュートンによって行われた微積分の最初の応用は、粒子の動力学の研究であり、微積分学はその後、定量モデリングの普遍的言語になった。量子力学の数学は本質的に不確定な量子現象の研究から生まれたが、その数学的構造はその起源に結びついていない。裏返して言えば、それゆえに、場の量子論の数学が量子系だけにとどまらず、自然科学や社会科学にまたがる幅広い分野に応用できることを示していると考える者を生んだとさえ言える。量子力学の数学は、やがて微積分学に取って代わり、定量モデリングと数学的思考の普遍的な枠組みになると考える者もいる。

 

事実、量子物理学以外の量子力学の数学の重要な応用は異なる分野で行われ、多くの画期的な結果をもたらしてきた。つまり、量子力学の数学は量子系のみに限定されることなく、多くの古典的問題にも適用されてきた。有名な例としては、ノーベル物理学賞を受賞したケネス・ウィルソンによる古典的相転移の解法とか、フィールズ賞を授与されたエドワード・ウィッテンによる結び目の3次元における完全分類がある。

 

量子ファイナンスの形式も、この精神の下で展開され、量子力学の数学のファイナンスへの応用に基づいている。2次元量子場は、バーキーによって利子率とクーポン債の分析に適用されている。経済学への応用は、これまたバーキーによって行われ、2次元量子場を利用して先物資産価格のモデル化がなされた。こうした、量子力学の数学をファイナンス理論と経済学の両方に応用する基盤は、利子率と先物資産価格の挙動をモデル化するためのファインマン経路積分の採用である。

 

物理学から経済学やファイナンスへのアイデアの応用は、量子ファイナンスが属するエコノ・フィジックスと呼ばれる新しい分野の創造に繋がった。要は、量子ファイナンスとは、ファイナンスにおける問題を解決するため量子物理学者と経済学者によって発展した理論と方法を応用する学際的研究領域である。

 

古典物理学から量子物理学へと発展したように、計算方法も古典的なものから量子的なものへ発展してきた。量子コンピュータは、量子力学のシミュレーションにおいて、他のいくつかのアルゴリズム、例えば因数分解のためのショアのアルゴリズムや量子探索問題を解くためのグローバーアルゴリズムのように、古典的なコンピューターより優れた結果をもたらしてきた。これらはコンピュテーショナル・ファイナンスの問題を解くための研究を魅力的な領域としている。多くのコンピュテーショナル・ファイナンスの問題は、計算における複雑性の程度が高く、古典的なコンピューターでは解へ収束するのが遅い。特に、オプション・プライシングにおいては、急速に変化する市場に対応するための結果として新たな複雑性が生じている。例えば、不正確に価格付けられた株式オプションから利益を得るためには、ほとんど連続的に変化する市場において次の変化が訪れる前に計算を終わらせなくてはならない。ファイナンス業界はオプション・プライシングにおいて表れるパフォーマンスの問題を克服する方法を常に探しており、このため、ファイナンスに他の計算方法をあてはめる研究が進められている(「やれ、MACDがどうの、移動平均線がどうちゃら、ボリンジャーバンドが云々」と出鱈目な「テクニカル分析」で得意げになっている、そこらのサルみたいな「個人投資家」とは訳が違うのだ)。

 

多くの量子オプション・プライシングの研究は典型的にはシュレーディンガー方程式のような連続方程式の観点から、古典的なブラック=ショールズ=マートンの確率偏微分方程式量子化に焦点を当ててきた。ヘイブンはチェンと他の研究者の研究に基づき、シュレーディンガー方程式の観点から市場を考察している。ヘイブンの業績の主要な成果は、ブラック=ショールズ=マートンの方程式は、実は市場が効率的であると仮定した時のシュレーディンガー方程式の特殊ケースであることを示したことである。ヘイブンが導いたシュレーディンガーに基いた方程式は、パラメーターħh複素共役と混同するべからず!)を持ち、このパラメーターは無限には速くない価格の変化、無限には速くない情報の伝播、投資家間の富の分布を含む様々な要因の結果として市場に現れる裁定量を表現している。ヘイブンはこの値を適切に設定することにより、実際には市場は効率的でないことから、より正確なオプション価格が導けると主張していた。

 

バーキーは、経路積分をいくつかのエキゾチック・オプションに適用し、解析的な結果を得て、それら結果とブラック=ショール=マートンの方程式の結果を比較すると、両者はとても類似していることが分かってきた。ピオトロスキは、オプションの原資産となる株式の挙動に関するブラック=ショールズ=マートンの仮定を変えることで異なるアプローチを取っている。株式がウィーナー過程に従うという仮定の代わりに、ピオトロスキは、株式がオルンシュタイン=ウーレンベック過程に従うと仮定した。この新しい仮定の下で、ヨーロピアン・コールオプションの公式のみならず、量子ファイナンスモデルを導き出した。

 

ハル=ホワイト・モデルのような他のモデルにおいても、利子率デリバティブなどの古典的な設定に対して同じアプローチが用いられている。クレンニコフはヘイブンや他の研究者の業績に基づき、更にブラック=ショールズ=マートン方程式によって作られる市場効率性の仮定は不適切だろうという考えを支持している。この考えを補強する為に、クレンニコフはファイナンスへの量子論の適用に対する批判を克服するための方法として、量子力学の確率における文脈依存性の枠組をもとにしている。アッカーディとブーカスは、ブラック=ショールズ=マートン方程式を量子化し、原資産の株式がブラウン運動ポアソン過程の両方を持つ場合を考慮している。

 

チェンは、量子二項オプション・プライシング・モデル(または量子二項モデルと省略)されるものを提示している。比喩的に述べれば、チェンの量子二項オプション・プライシング・モデルとは、ブラック=ショールズ=マートンのモデルに対するコックス=ロス=ルービンシュタインの二項価格評価モデルのように、既存の量子ファイナンスモデルの結果を変えないまま離散化・単純化したものである。これらの単純化は関連理論を解析しやすくするだけでなく、コンピューターへの実装を容易にする。

 

加えて、心理学、社会科学、意思決定論などへの応用は、社会現象の定量的研究における量子力学の数学の有用性が高まっていることを示している。多くの大学、研究所が量子力学の数学の応用に関する講座を開設し、そこでの研究者は新しい予想外の応用を発見し続けている。非物理学的領域、特に社会経済科学および認知科学における量子構造の同定に関する研究など、量子力学の数学的定式化をミクロの世界以外で用いることが俄かに関心の的とされてきているのだ。

 

前世紀から、21世紀は量子力学的知が全世界を席巻するだろうと予想され、その実、量子情報理論の分野は、各国の覇権をめぐる水面下の戦争にまで発展していると言っても過言ではない。相変わらず日本政府を始めとして、日本人は、右も左も関係なく、ごく一部の例外を除いて、事態がとんでもない状況に及んでいることに気がついている様子がない。中共中央は、サイエンスとファイナンスという二本柱を押さえることで、米国にとって代わって世界の覇権を握るべく、虎視眈々と長期的展望の下、計画を立案、実行に移してきたのだ。数年前、この分野の世界的権威の一人であるアントン・ザイリンガーがノーベル物理学賞を受賞した際に気が付くかと思ったが、どうやら、わが祖国の永田町の盆暗政治屋は事の重大性に気が付かず、しょうもない政争に明け暮れている。売国奴ここに極まれりといったところか(もちろん、ごく僅かながら、この方面に優れた日本の研究者は存在する!)。

 

この分野はまた、リアル・ポリティクスの次元を離れて原理的な次元においても、従来の狭義の量子力学の哲学だけでなく、もっと言えば、形而上学の次元にまで刺激を与え続けている。とりわけ、ライプニッツの哲学は、この量子情報科学の先駆とも言ってもよい思考の枠組みとアイディアを持っていたことが、この方面の一流の学者から注目され始めている。

 

ライプニッツの哲学的著作『モナドジー』を、現代量子物理学におけるいくつかの概念に関係づける議論がその一つ。特に、モナドの性質と素粒子の粒子波動二元論との関連が認められ、物質世界の展開の理由として、隠された顕在化されていない実在に関して思考の類似性を指摘する論文がチラホラ見られるようになっている。「非局所性」という現象は、ライプニッツの著作『モナドジー』で表現された概念との類似点が指摘されている。

 

更に、モナドジーと宇宙のホログラフィック的性質に関する現代の概念との関係についても分析が行われている。信じられないほど洞察力に溢れた先見の明あるライプニッツモナドジーを科学の歴史と哲学の貴重なリソースとし、現代の量子物理学の観点から古典的な哲学的著作の解釈を研究方法として採用した研究にもインスピレーションを与え続けてもいる。20世紀の段階で、例えば、ノーバート・ウィーナーは、ライプニッツを「場の理論の先駆者」とし、「ライプニッツの充足理由律は、量子力学の数学的方法の直接の祖先である」と称賛を惜しまない。クーパーマンによれば、「量子重力論の探求において、ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツの哲学は現代的復活を遂げた」と。

 

他の著者も、ライプニッツモナドジーと現代の量子物理学の明らかな概念的類似性について語っている。ジェーン・マクドネルは、ライプニッツが執筆した『モナドジー』に基づき、特に可能世界に関する純粋に哲学的なテーゼを検討し、現代物理学と数学の理論として登場した量子力学の歴史との類似点を描いて、現実性と可能性の関係の問題を探求している。ベルは、『モナドジー』に見られるライプニッツの空間と時間の概念を、量子力学における非局所性のアイデア形而上学的基礎として解釈している。日本でも、内井惣七ライプニッツの情報物理学-実体と現象をコードでつなぐ』(中央公論社)が斬新な「モナドジーの情報論的解釈」を提示している。坂部恵『ヨーロッパ精神史入門-カロリング・ルネサンスの残光』(岩波書店)にあるように、「ライプニッツは千年単位の天才」というのも宜なるかな

 

閑話休題量子力学の数学は、バーキー『経路積分ハミルトニアン』で議論されている。量子力学の研究とは対照的に、本書は場の量子論の数学の手引きでもある。場の量子論量子力学の違いは、無限に多くの変数、または無限に多くの自由度の結合である。本書の主な目的は、場の量子論の数理をファイナンス理論や経済学の研究者・実務家に紹介することであり、選択されたトピックは、ファイナンス理論と経済学の更なる研究を促進することができる場の量子論の数学的ツールを与えることを目的としている。

 

量子場は量子不確定性を持ち、古典的確率場は古典的ランダム性を持つ。これらの微妙な違いは、量子力学における測定理論の主題である。量子場の経済学とファイナンスへの応用は、すべて確率場の応用である。しかし、確率場と量子場の数学は同一であるため、量子場を量子物理学以外の領域に応用するすべての用途に「量子場」という総称が用いられるというわけである。

 

本書は、すべての導出が第一原理から行われ、しかも包括的な記述がなされているので、本書以外の著書をあれこれ参照する必要まではないが、但し、線形代数微積分学、確率論の実用的な知識を前提としているので、ベーシックな数学の知識がないと皆目理解できないかもしれない。しかし、丁寧な叙述で、しかも簡単な例から始めて、章を追うごとに、より高度なトピックを分析するための基礎を築いていく仕掛けになっているので、ある程度の数学的素養と相応の数学の知識があり、根気強く研究書を読む訓練を積んだ者であるならば、おそらく理解に届くのではないか(更に、これを実務で使いこなそうとなれば、そこから先は一定程度のセンスが要求される)。

 

量子力学の数学の、経済学とファイナンス理論への応用をより詳しく説明するために、経済学とファイナンス理論の章が量子場の章と織り交ぜられて編まれているのも本書の特徴の一つ。このように、読者は、場の量子論の考え方をその応用と直接結びつけることができ、特に、これらの考え方が経済学やファイナンス理論にどのように引き継がれているのかを知ることができる。本書の約半分が場の量子論そのものに充てられ、残りの章は、経済学やファイナンス理論への様々な応用に焦点が当てられているのも、そのためだ。

 

場の量子論は、素粒子物理学の領域全体がその経験的成功の証であるため、その有用性と妥当性について今更経験的証拠を必要としない。したがって、場の量子論に関する章では、様々な数学的アイデアとその導出に焦点が当てられており、実際、アスタリスクでマークされている経済学とファイナンスの章をすっ飛ばすと、本書は場の量子論の手引書としても読めるようになっている。

 

定理や補題などで埋め尽くされた、非常に一般性の高い結果を導く数学の研究書とは若干異なり、量子力学や場の量子論の教科書のページをめくるだけで、量子物理学にはあまり定理がないことがわかる。代わりにあるのは、主要なモデルと重要例であり、これらのモデルの「物理学」を解釈し、説明し、導き出す際に数学的分析が登場する。場の量子論は、スカラー場、ベクトル場、スピノル場などの多くの例示的なモデルを分析することによって説明され精緻化されていく。これらの量子場のそれぞれは、特定のラグランジアンハミルトニアンによって記述され、繰り込み群の構造などに触れたより高度な章は、読者が基礎となるアイデアをよりよく理解した後にようやく持ち出される。

 

経済学とファイナンス理論に関する章の方法論は、場の量子論に関する章とはかなり趣を異にしている点に注意する必要があろう。量子力学の数学を量子物理学以外の経験的分野(経済やファイナンスを含む)に適用することの正当化のためには、経験的証拠によって裏付けがなされねばならない。量子力学の数学と古典系を概念的に結びつける論文は多く執筆されているが、不満な点は、反論しがたい経験的証拠があまり提示されているとまで言えないものが多い点である。この応用はまだ完全ではなく、興味深い数学的比喩としてのみ成り立っており、比喩が具体的な数理モデルとなるためには、経験的証拠が不可欠であると思われる論考がほとんだということだ。

 

このため、本書で扱われている経済とファイナンスのトピックは、市場データからの経験的な裏付けがあるものが選択されている。更に、これらの量子力学の数学的モデルがどのように市場に適応され、その後どうテストされるかについて詳細な分析が行われる。経済学とファイナンス理論に関する章では、経路積分ハミルトニアンに基づいて具体的な理論モデルが分析される。非線形利子率に関する序章では、その形式に焦点を当てている。その理由は、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)によって実現される非線形利子率の量子ファイナンスモデルが、市場データを使用して調整され、徹底的にテストされているためである。この点を扱っている2つの章では、数値計算アルゴリズムとシミュレーションを使用して非線形利子率を研究している。ここでは、非線形利子率の重要な特徴、つまり、ほとんどの場合、解を得るために数値解析的手法が必要である点を説明されている。

 

量子場の非線形性は、自己相互作用または他の場との結合によって生じ、有限の結果を得るためには繰り込みの手順が必要である。自己相互作用する非線形スカラー場の正準的なケースを詳細に研究し、繰り込みで生じる問題を分析している。場の量子論の定式化は、場の量子論の最も深い概念の一つである、繰り込み繰り込み可能性、繰り込み群の概念でクライマックスに達する。実際、ディディエ・ソネットは、繰り込み群のアイディアが、市場のメルトダウンを理解し予測するための数学的枠組みを提供できることを長年主張している。

 

読みようによっては眩惑されてしまいかねないトピックの連続ではあり、今のところ、半信半疑にならざるを得ないが、場の量子論の一部であるモデルの多様性と複雑さを読者に味わわせてくれることは確か。ここまでやるなら、ヤン・ミルズ・ゲージ場の研究と時空超対称性の研究があっても不思議ではないけれど、それが欠落しているのは、これらのトピックは前提知識が更に必要となるので、おそらく本書でカバーすることは到底できなかったのかもしれない。

 

いずれにせよ、こういう「何でもあり」のアナーキーな書に惹かれてしまうのは、昔から変わらないのはなぜなのだろうか…。