shin422のブログ

右翼反動による「便所の落書き」擬きの日記

変態フーコー

久方ぶりにデイヴィッド・ハルプリン『聖フーコーーゲイの聖人伝に向けて』(太田出版)を読み返してみて、ミッシェル・フーコーという歴史家/思想家は、その狭義の政治的主張には同意できなくとも、やはり偉大な知識人だったのだなと改めて思う。フーコー…

ドゥルーズ・ブーム

1980年代に浅田彰『構造と力-記号論を超えて』(勁草書房)が火付け役となってドゥルーズのブームが沸き起こり、蓮實重彦『フーコー・ドゥルーズ・デリダ』(河出文庫)や中沢新一『チベットのモーツアルト』(講談社学術文庫)や宇野邦一『意味の果てへの…

格差問題

今更ながら「リベラル」や左翼が「反緊縮」を掲げている姿を見ると笑うしかないのだが、もちろんその主張は「経済成長はいらない」だの「脱・経済成長」といった経済学知らずの世迷い事を諳んじていたどこぞの哲学系エッセイストの妄言よりは遥かに現実的な…

ドゥルーズの社会存在論

『無の自覚的限定』に収録されている論文「私と汝」において、西田幾多郎は、いかなる具体的な場ではない開かれた普遍性の極限にあるという意味でとりあえず「無」という他ない「場所」が自己限定していく分節作用によって私と汝が何者でもない「裸の存在」…

謎としての自然

『平家物語』巻九は、主として一の谷の合戦の様子が描かれているが、特に「知章最期」の段は、生田の森の大将軍新中納言知盛の心の動きを追っていくことを主旋律として、その知盛の子である知章の最期が物語られてゆく切ない箇所である。監物太郎という侍と…

悪質な不動産業者と金融機関の共謀によって煽られた不動産投資の末路

報道によると、スルガ銀行がシェアハウスなど主力の投資用不動産向け融資に関する全件調査の結果を発表し、行員による審査書類の改竄などの不正や、不動産業者の関与も含めて不正の疑いが判明した融資総額は1兆円超に上ると説明。この額は不動産融資全体の約…

森嶋通夫『思想としての近代経済学』(岩波新書)のすすめ

社全体の政治傾向に対する反発や、専門書であっても事項索引を付けない省エネ編集方針に対する批判はあるが、昔の岩波新書の質は、老舗の名門出版社としての岩波書店らしいレヴェルの高さを誇っていた(全集や著作集を岩波書店から出すのは、一種のステータス…

任意処分再び

ほぼ10年ぶりに以前書き散らかした文章をほぼ修正なしに再掲することになるが、警察官職務執行法(以下、警職法)2条1項によると、警察官は何からの犯罪を犯したあるいは犯そうとするとの疑いがもたれるなどの挙動不審者を停止させて質問することができる。…

Fools, Frauds and Firebrands

以前、神田神保町の古書店で108円という値で叩き売られていた谷沢永一『悪魔の思想-「進歩的文化人」という名の国賊12人』(クレスト社)は、あからさまに「岩波系」の「進歩的文化人」とされた知識人だけを狙い撃ちした、思想研究というより単に一部の字面…

吉本隆明と日本の批評

ウォーラーステインは、1848年の二月革命と並んで1968年のパリ五月革命を近代史における転換点となる「革命」として位置づけている。金融に携わっている者だからなのかも知れないが、この見解はウォーラーステインの学説自体への評価とは別に、どうも陳腐に…

刺青と伝統

いよいよ三社祭が季節がやってきた。それに合わせて、一寸前、ある彫り師の男性が医師法違反で略式起訴された件で、同法違反を認定して罰金刑を言い渡した一審判決を覆して逆転無罪判決を下した控訴審判決が報道されたことが思い出される。一審判決は、医師…

野蛮な暴力

理論哲学では、人間社会の本質と構造を論じる際、概して発生論的な議論よりも存立構造論が中心に据えられる傾向にあるが、廣松渉は『役割理論の再構築について』(岩波書店)において、人間の社会生成の基底的場面に関して役割行動に基づく発生論的な論理に…

「憲法記念日」にあたって

今日は、占領憲法が施行されたことを記念する「憲法記念日」で、民族派も街宣活動や護憲派集会への抗議活動を展開する団体も多かっただろうが、概して民族派の多くは、安倍晋三が主導する憲法改正プランには賛同していない。あくまで自主憲法制定を主張する…

歴史と伝統

歴史は、絶えず新たな意味を纏って生き直される。皇紀2679年4月30日、今日から上皇となられた先帝陛下の御譲位を告げる御言葉があり、この5月1日を以って東宮であられた新帝の御即位と相成り、令和の御代が始まりを迎えた。先帝の御言葉の通り、我が国の令和…

移民とナショナリズム

Douglas MurrayのThe Strange Death of Europe: Immigration, Identity, Islamは、西欧諸国が抱える移民問題に真正面から向き合った書として反響を呼び、ともすれば類似の問題を抱えるかも知れぬ日本と無縁ではないとばかりに邦訳も出されたようだが、安倍政…

日本は、ふさわしく遇してきたか-渡辺恭彦『廣松渉の思想-内在のダイナミズム』(みすず書房)を読んで

この題は、平成6(1994)年の秋に大江健三郎のノーベル文学賞受賞が決定された直後に、蓮實重彦が「朝日新聞」夕刊の文芸時評に寄稿した文章の題をもじったものだが、蓮實重彦はここで、大江健三郎の作品の質からすればこのような栄誉がいつ訪れても不思議で…

哲学における一部の流行現象について

今から8年ほど前になろうか、NHKで放映されていた「ハーバード白熱教室」がきっかけとなって、日本ではちょっとしたマイケル・サンデルのブームが起きたことを覚えている人も多いだろう。ハーヴァード大学での「正義」と題するサンデルによる学生の聴衆と…

名著復刊

蓮實重彦『帝国の陰謀』が、ちくま学芸文庫から復刊されていることに今頃気がついたのであるが、この書は日本文芸社から出版されたのが元で、僕の手元にあるのも確か神保町の古書店で売られていた初版本である。本書に関係する『凡庸な芸術家の肖像-マクシ…

国際政治学の貧困と「御用学者」

今から3年ほど前に国会で可決した平和安全法制整備法をめぐる国会前での反対派のデモが、マスメディアでも大きく取り上げられていたことは記憶に新しい。中でも、この法制を危惧する「SEALDs」を中心とする大学生等若者の行動が目立ったことも鮮明に記憶し…

春季例大祭をむかえて

今年はキリスト教の東方教会を除く教派のイースターは21日なので、ところによると数日前からイースター休暇に入った国もあるが、我が国では21日から3日間、靖國神社の春季例大祭が挙行されている。安倍晋三内閣総理大臣は今年も昇殿参拝を控え真榊を奉納する…

柄谷行人について

哲学者ジョン・ロックは次のような文章を残している。 「奇妙で馬鹿げた学説を流行させたり主張したりするには、曖昧でわかりにくく、意味のはっきりしない言葉をふんだんに用いて周りを固めるに若くはない。しかしながら、そうして出来上がる巣窟は、正々堂…

刑事訴訟法321条1項2号の改訂を

渡部昇一『萬犬虚に吠える』(小学館文庫)に収録されているロッキード裁判批判と立花隆『ロッキード裁判批判を斬る』全三巻(朝日文庫)を通じて互いに罵り合っていた渡部・立花論争は雑誌『朝日ジャーナル』での紙上論戦が元になっているが、論争という論…

男色・暴力・倫理

柳田国男と双璧をなす民俗学者であり国学者であった折口信夫は、弟子の加藤守男に肉体関係を迫りながら、堂々と次のように言ってのけたという。 「森蘭丸は織田信長の寵愛を受けたからこそ歴史的人物になったのであって、君も折口信夫に愛された男としてその…

京都という場と学知

桜の季節も終わり花見客も消えたとはいえ、いまだ朝から夜半まで国内外からの観光客が絶えない様子の京都についてテレビで報じられていたが、桜の季節が終わっても次は大型連休や修学旅行の時期がやってくるから、京都の喧騒はしばらく止みそうにないだろう…

偶然性の倫理Ⅱ

ヒュームによれば、理性という概念は必然性ないしは不可避性を意味するとともに、正邪善悪を判断する価値基準でもあるとされる。しかし、理性が必然性を有する場合は極めて限られている。数学のように前提から演繹していくような場合がそれである。逆に、数…

ヤンキー研究

打越正行『ヤンキーと地元』(筑摩書房)と知念渉『<ヤンチャな子ら>のエスノグラフィー』(青弓社)と立て続けに社会学的な「ヤンキー研究」本が出版された。社会学の中のエスノメソドロジーに分類される研究に関する書籍だが、この方面の先駆的研究書は…

学問研究の誠実性

毎年同様、4月12日に東京大学の入学式が行われたが、そこでの上野千鶴子東京大学名誉教授の祝辞が一部で話題になっているようだ。その内容に賛同する者もいれば反発を覚える者もいて、入学式での話題をさらったという意味では上野千鶴子の狙いは半分以上果た…

毛沢東のマキャベリズム:遠藤誉『毛沢東-日本軍と共謀した男』(新潮新書)を読む

毛沢東は、大日本帝国による大陸進出によって追い込まれた自国の窮状を打開せんがために「抗日救国」を掲げて日本軍との戦闘を勇敢に戦い抜き、大日本帝国敗戦後において蒋介石率いる国民党との革命戦争に勝利して中華人民共和国を建国した英雄的革命家であ…

芦部信喜と憲法第九条

芦部信喜著・高橋和之補訂『憲法(第七版)』(岩波書店)が書店に並び、早速Amazonでも法律書憲法部門でベストセラー1位になっているようである(4月12日現在)。憲法解釈学の基本書の中の名著として多くの読者に迎え入れられてきた歴史からも、今回も相当な売…

谷崎潤一郎の『細雪』で描かれる京都の平安神宮神苑における枝垂桜を見物するシーンのところで桜について記した有名な一節がある。 「古今集の昔から、何百首何千首とある桜に関する歌、-古人の多くが花の開くのを待ちこがれ、花の散るのを愛惜して、繰り返…