shin422のブログ

『哲学のヤンキー的段階』のための備忘録

論争家・谷沢永一

『野火』や『俘虜記』あるいは『レイテ戦記』などの戦争時の体験を元にした小説や、『武蔵野夫人』といった恋愛小説、あるいは『堺港攘夷始末』などの歴史小説で知られる、戦後日本文学の代表的小説家である大岡昇平は、数ある論争でも知られる論争家として…

唯物史観の原像

日本はマルクス研究が昔から盛んで、研究者の層の厚さでは、かつての新カント派研究と類似して、本国よりも日本の方が勝っているという珍妙な現象が見られる。これまでマルクスの入門書として数多の本が量産され続けてきたが、唯物史観についてその概要を知…

裾野を広げる

強豪南アフリカを日本が破るという番狂わせを演じた前回のラグビーW杯から4年後の今年、日本で初めて開催される今大会が今日、名誉総裁を務められる秋篠宮殿下及び同妃殿下の御臨席を賜り、殿下の開会宣言の御言葉で以って無事開幕した。日本の対戦相手は世…

憎悪の連鎖

いわゆる「嫌韓」を主張する勢力に対する警戒の声が、「ヘイトスピーチ」規制の実施を求める声となって表れている。かつての「在日特権を許さない市民の会(在特会)」の活動など、「行動する保守運動」と称する一連の排外主義的主張を展開している集団の言…

Crisis between the United states and Iran

Yemen’s Houthi rebels launched drone attacks on the world’s largest oil processing facility in Saudi Arabia and a major oil field Saturday, sparking huge fires at a vulnerable chokepoint for global energy supplies. It remained unclear hour…

旭日旗を高く掲げよう

9月13日といえば、明治天皇の御大葬の号砲とともに自刃した乃木希典将軍の御命日である。この殉死という出来事は、夏目漱石や森鴎外にも大きな影響を与えた「思想的事件」であった。 乃木将軍の人格や生き方がその人の行く末に爪痕を残した人は、もっとも漱…

日本史上最大の政治家・藤原不比等

小林秀雄が終戦後に著した文章の中に、「蘇我馬子の墓」という奇妙な随筆がある。この「蘇我馬子の墓」という文章は、読めば読むほど謎が膨らんでくるもので、その難解さは、戦前に書かれた「無常といふ事」の上を言っていると思われるのだが、いずれにせよ…

Westphalian World and China's military buildup

No truly global world order has ever existed. What passes for order in our time was devised in Western Europe nearly four centuries ago, at a pease conference in the German region of Westophalia, conducted without the involvement or even t…

動機と効果意思

平成29(2017)年5月26日に民法の一部を改正する法律が成立したわけだが、民法のうち債権関係規定は,明治29年(1896)年に民法が制定されて以降約120年間ほとんど改正がされていなかったところ、今回の改正は,民法のうち債権関係規定につき、取引社会を支…

Proust on the concept of time(Reprint)

In his ‘Time and Free Will’, Bergson states that the general conception of time is that of a medium in which impressions are arranged in the same kind of order as is found in space: one impression directly follows another. With the excepti…

Probability, Economics, and Rational Choice

Probabilities permeate our lives: they show up in weather reports, science, popular reports of science, predictions about election results, chances for surviving diseases, prices on futures market, and of course, in casinos. Probability pl…

徂徠と丸山

大石内蔵助良雄率いる赤穂旧浅野藩浪士が江戸本所松坂町吉良上野介義央邸に押し入り、吉良の首を討ち取ったいわゆる赤穂事件と称される騒動が起きたのは元禄15年12月14日である。この12月14日には播州赤穂や京都山科では赤穂浪士を偲ぶ義士祭が執り行われ、…

牙をちらつかせる中共と香港情勢

いわゆる「逃亡犯条例」案が議会に上程されて以降、これに抗議する若者を中心とした香港のデモは今もなお続いており、漏れ伝わるところ、一層過激さを増してきているという。香港で開催が予定されている「一帯一路サミット」が間近に迫る中、中共中央はこれ…

歴史の皮肉

福沢諭吉が時事新報に所謂「脱亜論」を執筆したのは、甲申事変が勃発した後の明治18(1885)年3月である。福沢は、強硬な対支開戦論を「時事新報」紙上において展開したために、しばしば当局から社説掲載を禁じられたり、「時事新報」自体が廃刊処分の危機に…

経済の量子論的アプローチ?

経済学に対する「量子論的アプローチ」なるものは、貨幣システムが離散性・不確定性・エンタングルメントなどの量子論的特性を示しているという経験的事実に触発されている。もっとも、「量子論的アプローチ」が経済のあらゆる側面をモデル化する最良の手法…

アラン・バディウ『存在と出来事』・『世界の諸論理』

フランスの哲学者アラン・バディウの著作は数多く邦訳されてはいるが、肝心の主著となると未だ翻訳されていない(邦訳されているものと言えば、かなりハチャメチャや訳がまかり通っているのだからたまらない)。その主著とは、L’être et l’événement(以下『…

「清浄な心」と「ふしだらな心」

二十歳の若さで夭折したフランスの詩人・小説家レイモン・ラディゲの『ドルジェル伯の舞踏会』は、「ドルジェル伯爵夫人のそれのような心の動きは時代おくれなのだろうか?」という一文で始まっている。このラディゲの恋愛小説は、文学史的な位置づけでは、1…

ますます面白くなってきた日韓関係

来月2日にも日本政府は、輸出管理における優遇措置の対象となる「ホワイト国」から韓国を除外するための政令改正の閣議決定を行うとの見通しだ。韓国政府や韓国の国民の「発狂」ともいえる異常な反応ぶりが報道を通じて伝わっているが、この措置に対して我が…

変態フーコー

久方ぶりにデイヴィッド・ハルプリン『聖フーコーーゲイの聖人伝に向けて』(太田出版)を読み返してみて、ミッシェル・フーコーという歴史家/思想家は、その狭義の政治的主張には同意できなくとも、やはり偉大な知識人だったのだなと改めて思う。フーコー…

ドゥルーズ・ブーム

1980年代に、浅田彰『構造と力-記号論を超えて』(勁草書房)が火付け役となってドゥルーズのブームが沸き起こり、蓮實重彦『フーコー・ドゥルーズ・デリダ』(河出書房新社)や中沢新一『チベットのモーツアルト』(講談社)や宇野邦一『意味の果てへの旅…

ドゥルーズの社会存在論

西田幾多郎は、『無の自覚的限定』に収録されている論文「私と汝」において、いかなる具体的な場でもない、開かれた普遍性の極限にあるという意味で、とりあえず「無」という他ない「場所」が自己限定していく分節作用によって、私と汝が何者でもない「裸の…

謎としての自然

『平家物語』巻九では、主として一ノ谷の合戦の様子が描かれているが、特に「知章最期」の段は、生田の森の大将軍新中納言知盛の心の動きを追っていくことを主旋律として、その知盛の子である知章の最期が物語られてゆく切ない箇所である。とりわけ、監物太…

森嶋通夫『思想としての近代経済学』(岩波新書)のすすめ

社全体の政治姿勢の傾向に対する反発や、専門書であっても事項索引を付けない省エネ編集方針に対する批判など、物申したいことは数多くあるけれど、昔の岩波新書の平均的な質は老舗の名門出版社らしい高い水準さ誇っていた。だからこそ、全集や著作集を岩波…

任意処分再び

ほぼ10年ぶりに以前書き散らかした文章をほぼ修正なしに再掲することになるが、警察官職務執行法(以下、警職法)2条1項によると、警察官は何からの犯罪を犯したあるいは犯そうとするとの疑いがもたれるなどの挙動不審者を停止させて質問することができる。…

刺青と伝統

いよいよ三社祭が季節がやってきた。それに合わせて、一寸前、ある彫師の男性が医師法違反で略式起訴された件で、同法違反を認定して罰金刑を言い渡した一審判決を覆して逆転無罪判決を下した控訴審判決が報道されたことが思い出される。一審判決は、医師法1…

「憲法記念日」にあたって

今日は、占領憲法が施行されたことを記念する「憲法記念日」で、民族派も街宣活動や護憲派集会への抗議活動を展開する団体も多かっただろうが、概して民族派の多くは、安倍晋三が主導する憲法改正プランには賛同していない。あくまで自主憲法制定を主張する…

歴史と伝統

歴史は、絶えず新たな意味を纏って生き直される。皇紀2679年4月30日、今日から上皇となられた先帝陛下の御譲位を告げる御言葉があり、この5月1日を以って東宮であられた新帝の御即位と相成り、令和の御代が始まりを迎えた。先帝の御言葉の通り、我が国の令和…

日本は、ふさわしく遇してきたか-渡辺恭彦『廣松渉の思想-内在のダイナミズム』(みすず書房)を読んで

この題は、平成6(1994)年の秋に、大江健三郎のノーベル文学賞受賞が発表された直後に、蓮實重彦が「朝日新聞」夕刊の文芸時評に寄稿した文章の題をもじったものだ。蓮實重彦は、大江健三郎の作品の質からすれば、このような栄誉がいつ訪れても不思議ではな…

哲学における一部の流行現象について

今から8年ほど前になろうか、NHKで放映されていた「ハーバード白熱教室」がきっかけとなって、日本ではちょっとしたマイケル・サンデルのブームが起きたことを覚えている人も多いだろう。ハーヴァード大学での「正義」と題するサンデルによる聴衆との対話…

名著復刊

蓮實重彦『帝国の陰謀』がちくま学芸文庫から復刊されていることに今頃気がついたのであるが、この書は日本文芸社から出版されたのが元で、僕の手元にあるのも確か神保町の古書店で売られていた初版本である。本書に関係する『凡庸な芸術家の肖像-マクシム…